SE™(ソマティック・エクスペリエンシング®)療法とは

SE(エスイー)療法、
ソマティック・エクスペリエンシング(Somatic Experiencing®)療法
~以下、「SE療法」と表記~
について、ここでは、以下5つの内容で説明してみます。

意外と説明が難しいSE療法なのですが、
私なりに、かみ砕いてまとめたつもりです。
正直、長い記事になりますが、ご興味ある方はお読みくださいませ。

▼目次

【1】SE療法は、最新のトラウマ療法
【2】SE療法は、自律神経のメカニズムをふまえた、神経生理学的アプローチ
【3】SE療法は、動物脳とハ虫類脳 に働きかける
【4】SE療法は、未完了の完了、未解放の解放をめざす
【5】トラウマとなった未完了への対応

【1】SE療法は、最新のトラウマ療法

SE療法は、米国のピーター・リヴァィン博士が開発した最新のトラウマ療法です。
NASAアメリカ航空宇宙局でも使われています。

日本では、最新のトラウマ療法というと、
NHKで取り上げられたこともあり、「EMDR」(眼球運動による脱感作と再処理法)が有名なようです。EMDRは、ソマティック(身体的/非言語的)アプローチの心理療法ですが、SE療法も、そのようなソマティック・アプローチの1つになります。

SE療法は、トラウマ症状の解消や、慢性的ストレスの軽減に役立ちます。
また、不安障害や過敏性腸症候群など、自律神経系の過剰活性や調整異常からくる不具合にも効果があります。

1回のセッションで改善、とはいきませんが、SE療法のアプローチを重ねることで、
自分が無意識にとってきた神経パターンを少しずつ変えていき、
自己調整力を養っていく効果があります。

ソマティック・エクスペリエンシング

【2】SE療法は、自律神経のメカニズムをふまえた、神経生理学的アプローチ

体調不良やメンタルヘルスの改善を考える時、「自律神経」を考えることは、医療業界、健康業界において、いまや常識です。
そしてSE療法は、まさにその、自律神経のメカニズムをふまえてアプローチする療法です。

自律神経とは、カラダの外環境と中環境をモニターして、心身の状態をコントロールしている神経です。

天気、気温、体調、疲労具合、対人ストレスなどの「刺激」をリアルタイムで感知して、
身体の様々な生理現象
(体温、血圧、脈拍、呼吸、血流、食べ物の消化、排出、睡眠リズムなど)をコントロールしています。
本人の意思に関係なく、自律的に(自動的に)活動するので、「自律神経」といいます。


この自律神経は、車でいうと
「アクセル」のような交感神経と、
「ブレーキ」のような副交感神経
その2系統が、シーソーのような関係で働いて調整している、とするのが、従来の理論でした。

日本では、まだまだ その「2系統システム論」が一般的なのですが、近年になって、
ホ乳類動物においては、
3系統システム(交感神経系、腹側迷走神経複合体、背側迷走神経複合体)
で説明した方が、いろいろと説明が付く。
…とする、「ポリヴェーガル理論」が出てきました。

ポリヴェーガル理論は、新しい自律神経の理論として、
医療・教育・セラピー業界で、今・大注目となっている理論です。

※上記のイラスト使用許諾についてはこちら

SE療法では、この最新の自律神経理論「ポリヴェーガル理論」にもとづき、アプローチします。

そして、トラウマ症状には、自律神経の「逃走/闘争/凍りつき反応」が大きく関係しており、それらの生理的反応が 未解放・未完了となってしまった時に、トラウマ症状や 神経系の調整異常が起きるのだ と考えます。
(詳しくは後半の説明参照)

SE療法は、そんな、
自律神経系のメカニズムをふまえた、神経生理学的視点のアプローチなのです。

【3】SE療法は、動物脳とハ虫類脳 に働きかける

下の図は、脳の構造をざっくりと表した模式図です。三位一体脳モデルとも言います。

三位一体脳モデル

※上記のイラスト使用許諾についてはこちら

SE療法は、「動物脳」と「ハ虫類脳」に働きかけます。

アタマでは分かっていても、気持ちと カラダがついてこない。

という時、脳の中では、

アタマ(=理性脳)では分かっていても、気持ち(=動物脳)と カラダ(=ハ虫類脳)がついてこない。

・・・ということが起きているのです。

「動物脳(大脳辺縁系では、
食欲、性欲、快/不快、愛着感情、怒り、やる気など、
動物(主にホ乳類動物)に共通する感情を司っています。
これら感情は、犬やネコなどのホ乳類動物も持っていますよね。

また動物脳の領域には、
記憶に関わる「海馬」や、
不安・恐怖に関わる「扁桃体」も存在します。

動物に、理屈や言語で何かを分からせようとしても、難しいものです。

犬やネコには、少しだけ言葉が通じるような気がしますが、
あれは、言葉の「内容」というより、
声のトーンや表情、見た目の印象などの「非言語的メッセージ」
何となく(直感的に)相手に伝わって、
それで、一定のコミュニケーションが取れているんですよね。

さて、この動物脳(感情脳とも言います)の影響力は、
理性脳よりも はるかに大きい
のです。

人間が、もっともそうな理屈で
いろいろな説明や言い訳をしていても、
実はその根っこは、

快/不快、好き嫌い、やる気の有無、不安、恐怖、寂しさ…

などが理由であることが、圧倒的に多いんです。

この、根っこにある感情や感覚を 本人が自覚できていれば まだいいのですが、
本人すら自覚していない。
無自覚だけど、実はバッチリ影響されている。
そんなことが非常に多い
のです。

三位一体脳モデル

さらに、もっと重要で影響力が強いのが、「ハ虫類脳(脳幹)」です。

ハ虫類脳は、ハ虫類(ヘビやワニなど)も共通して持っている、原始的な脳の部分です。
このハ虫類脳は、先に挙げた自律神経も司っており、
動物が生存するために必要な、
基本的な身体的機能 や 反射
を担当しています。

ハ虫類脳(脳幹)にとっては、

「それは、生存のために必要か」
「生存のために、危険か安全か」

しか考えません。
とにかく、安全に生き長らえること。
それが至上命題なのです。

この脳幹にはもちろん、
言語でのメッセージなど、通じません

「これは危険じゃないから、そんなに心臓をドキドキさせなくても大丈夫なのよ。」
とか、
「この場所は安全だから、そんなに身体中の筋肉を萎縮させなくてもいいのよ。」
などと説得しても、分かってもらえません。

ハ虫類脳(脳幹)が キケン!と察知するものなら、とにかく生き残るために、
自律神経をつかって
「戦うか逃げるか」の防衛反応をとろうと、
全力で、必死で、準備をしてしまう
のです。

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SE療法では、このような
「理屈や言語は通じない」けれど、
人間の行動や反応に「とても影響力を与えている」動物脳やハ虫類脳に対して、

イメージとか身体感覚という
「非言語的/身体的メッセージ」を使って、
メッセージを伝えよう、アプローチしようと考えます。

以下は、SE療法で主につかう2つの感覚です。

◆外受容感覚(SEでは「オリエンテーション」とも言う)
・外部環境を、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感を通じて、直接的に把握したり、感じ取ったりすること。
◆内受容感覚(心理の世界で言う「フェルトセンス」
・身体の内部環境を、呼吸、心拍数、体温、平衡感覚、空腹や喉の渇き、消化排泄欲求、感情、快感苦痛などを通じて、気づいたり感じ取ったりすること。

このような
「オリエンテーション」や「フェルトセンス」を、
感じてもらったり、身体で表現してもらったりすることを通して、
動物脳やハ虫類脳にメッセージを送る
のです。

・「今は安全だよ」
・「危険なものは ないよ」
・「やりたかったことを やれたよ」
・「気持ちいいよ」
・「安心だよ」
・「もう 終わったよ」

・・・それを、脳に 実感として理解してもらい、学習してもらうのです。

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【4】SE療法は、未完了の完了、未解放の解放をめざす

当方では「ゲシュタルト・セラピー」も扱っていますが、
SE療法とゲシュタルトセラピー、両方に共通する特長が、
「未完了の完了」「未解放の解放」を目指すところです。

具体的なイメージを知りたい方は、
こちらの記事「私のSEセッション体験談 ~未完了を完了する~ 」をご覧ください。

こちらで紹介した体験談は、
SE療法の体験談だと説明しても、
ゲシュタルト・セラピーの体験談だと説明しても、どちらでも問題ないような内容です。

さて、この体験談では、
私が自転車事故を体験した時に、
気持ちやカラダがやりたかったのに出来なかったこと
~「ブレーキをかける」「自転車と自分の身体が、ちゃんと停止したことを確認する」「自分の足でしっかりと地面に着地する」「加害者であるA君に怒りをぶつける」~
ということが、まさに「未完了の事柄」でした。

それを、アタマで考え、意図的に行う・・・
「のではなく」、

・カラダの反応を確認しながら、
・カラダやココロ(動物脳やハ虫類脳)の
 自然な声(衝動)に従って、
・カラダが表現したい形で、
・カラダがしっかり味わえるように、

1つ1つ 行っていくのがポイントです。

そうして、
カラダやココロ(動物脳やハ虫類脳)が、

「未完了なことを 完了させられた!」
「未解放だったものを 解放できた!」

と、しっかり納得できるようにサポートするのが、これら療法の特長なのです。

ソマティック・エクスペリエンシング

【5】トラウマとなった未完了への対応

ここからは、SE療法で考える「トラウマ」のメカニズムです。

ハ虫類脳である「脳幹」が、危険!と判断した時は、
自律神経が作動して、
闘争か逃走かの「防衛反応」を起こします。

しかし、起きた出来事が あまりにも圧倒的な時、
人間や動物は「凍りついて」しまって、
逃げるも闘うも、どちらの反応も起こせなくなってしまいます。

だけど身体には、逃げるか闘うかのための
大量なエネルギーが、すでに準備されてしまっている。
そして 凍りついてしまったことで、
その大量なエネルギーを発散することもできず、
未完了のまま 抱え込んでしまう。

その未完了、未解放のエネルギーが
体内に残っていることが、
トラウマ症状を引き起こしている。
そう考えるのです。

この未解放のエネルギー、
野生動物であれば、
危険が去った後に 身体をブルブル震わせることで、
ちゃんと、解放・処理することができます。

ですが人間は、
なまじ理性が発達していたり、
本能に従えなかったりすることで、
その処理が、出来ないことが多いんですね。

だからSE療法では、
そのような未解放・未完了なエネルギーを、
「解放・完了」させることで、
トラウマ解消を目指す
のです。

しかしSE療法では、
これらを、一気に解放・完了しようとはしません。

クライアントの 
今の状態や神経パターンを踏まえた上で、
無理のない、安全な範囲や量で、
少しずつ解放・完了していくことを目指します

いわゆる「スモールステップ」
(SE療法では、これをタイトレーションと言うのですが)で、進めていくのです。

一気に進めないのは、トラウマとなってしまった出来事を、
その恐怖のままに、また再現するような形をとってしまったら、
その人はまた「凍りついて」しまって、また「未完了の完了」を果たせなくなってしまうから。
(これを再トラウマ化と言います)

あるいは、ダイエットと同じで、
欲張ってその人に負担のある形、無理のある形を取ってしまうと、後でリバウンドが起きてしまうから。

トラウマ解消もダイエットも、
無理のない方法で継続する方が、安全だし確実で、結局は近道である。
そんな感じでしょうか。

SE療法は、効果が大きいだけでなく、
クライアントに優しい、安全を重視した療法なのです。

ソマティック・エクスペリエンシング

SE(ソマティック・エクスペリエンシング)療法をもっと知りたい方は

ここまで長文を読んでくださった皆さん、
ありがとうございました。

ここまで読んでいただき、
イヤというほど分かって頂けると思うのですが、

SE療法は 一言では説明できない、
なかなか奥が深い療法
なのです。
細かい内容を書き出したら、本当にキリがない位、奥が深いです。

でも、そんなSE療法を
もっと詳しく知りたい、学びたいと思って頂けた方には!

こちら↓で、SE関連の書籍をご紹介しています。
ご興味ある方は、ぜひどうぞ。

SE(ソマティック・エクスペリエンシング)療法を知るための本はこちら

以上、SE療法療法についての、
私なりにかみ砕いた?説明を終わりにします。

先にもご紹介しましたが、SEセッションの具体的なイメージを知りたい方は、以下の体験談記事をどうぞ。
私のSEセッション体験談 ~未完了を完了する~

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