SE療法も紹介。トラウマや虐待など、複雑なケースの治療最前線の本。

2019年1月末に出版された、発達性トラウマ障害と複雑性PTSDの治療」
発達性トラウマ障害と複雑性PTSDの治療
著者の杉山登志朗氏発達障害やトラウマ治療では、国内でも有名な第一人者。現在も、最前線で活躍している精神科医だ。
この書籍では、トラウマやPTSDの具体的な治療方法について、惜しみなく情報提供をしてくれている。トラウマ発達障害虐待など、複雑なケースにたずさわることがある「精神科医」や「心理職」の人には、ぜひ一読してもらいたい。

【この記事の目次】
・どんな人におすすめ?
・我らがSE療法も紹介されている
・新たに学びたいトラウマ療法
・待ったなしのトラウマ対応

どんな人におすすめ?

まずは、実際に臨床現場に立っている「専門家」に読んでもらいたい。

特に 精神科医の方には、ぜひこの本の「少量処方」「TS処方」の章を読んでもらいたいなぁ…。

心理カウンセラーである私は、薬の処方について意見を言える立場ではないけれど、ここまで具体的に、効果的(逆効果)な薬の処方について、情報公開されることってないんじゃないかな。
クライアントさんにとって有益になることなら、ぜひ広まってもらいたい。

なお、専門書ではあるけれど、虐待経験など複雑なトラウマを抱えている方、加えて発達障害かもと思っている方、複雑な症状を抱えている方などにも、有益な情報だと思う。

我らが「SE™療法」も紹介されている

本書では、様々なトラウマ療法が紹介されているが、この中に、我らが「SE™療法」もしっかり紹介されている。

しかも その紹介のされ方が、何とも秀逸というか、その通りと思ってしまった。(^^;)
以下、本から引用する。

ソマティック・エクスペリエンシング(英語:SE)は、ボトムアップのさまざまな技法の大集合のようなものであり、大変に重要な治療技法である。

…中略…

SEの要約した解説は極めて困難であり、興味のある方はぜひ、この魅力的なトラウマ処理法について直接学んで欲しい。この技法には多くのメリットがあるが、治療にも、その習得にも非常に時間がかかるのが難である。しかしこの技法は、さまざまなトラウマ処理技法に大きな影響を与えてきている。

重要な魅力的な技法だが、「難」もある。
「習得」にも、非常に時間がかかる。

これは、後の「待ったなしのトラウマ療法」という項でも触れるが、杉山氏が、以下のように言及していることは、とても重要な指摘だと思う。

「トラウマの蓋を開けるというその重大さを考慮すれば、このような各技法の習得に課せられた枠(筆者注釈:ある種のライセンス制や時間やお金が掛かるなど)は当然である。しかしながら~ 」(続きは、「待ったなしのトラウマ療法」の項にて。)

新たに学びたいトラウマ療法

トラウマ治療の世界的第一人者、ヴァン・デア・コークも、著書「身体はトラウマを記録する」で、こう述べている。

トラウマには、これぞという「選り抜きの治療法」はないし、自分の手法が患者の問題に対する唯一の答えだと考えているセラピストは、患者を本当に回復させることに関心を持っているのではなく、特定の観念を信奉しているだけである疑いがある。

杉山氏もこの著書で、EMDRなど、様々なトラウマ処理技法を紹介している。そして氏の主張は、要約すれば、以下の通りだ。

単一の決まった方法だけで、発達性トラウマ障害や複雑性PTSDに対応することは難しい。むしろ、複数の技法や知見を柔軟に組み合わせ、カスタマイズして提供することが必要だと。そして、杉山氏の長年の臨床経験で辿り着いたのが、本書で提案する「治療パッケージ」だとしている。

私も、クライアントさんの状態やケース、傾向などによって、様々な技法を使ったり、あるいは その提供の仕方を工夫したりすることは、避けられない現実的なことだと思う。

そんな中、私が本書を読んで、改めて学びたい・習得したいと思った技法は、以下の通りだ。

◆「自我状態療法」や「内的家族システム療法(IFS)」
本書では「自我状態療法」を詳しく紹介しており、「内的家族システム療法(以下IFS)」については、言及していない。
ただ、両者はとても似ている心理療法で、私自身は、先に入門講座を受けたIFSの方で、学びを深めたいと思った。先に紹介したヴァン・デア・コークの書籍でも、IFSは詳しく紹介されている。

 

◆杉山氏が提唱する、TFTをベースにしたような「手動によるトラウマ処理」
タッピングやツボの効果は、私自身、意外とあるように感じている。
本書で紹介している「手動によるトラウマ処理」の方法も、ぜひ覚えて試してみたい。
特にこの方法は、クライアントさんが、日常の中で自分で使えるということ。そして安全性が高いということが、とても有用だと思う。

 

◆ホログラフィートーク
これも、IFSと繋がるところがあるセラピーだが、やっぱり学んでおきたい。

【おまけ】
本書のP106で紹介されていた「愛着の修復に有効な、神田橋條治によるコアラの気功」も、なんかいいな。協力者がいるクライアントさんなら、これも紹介したいな。

待ったなしのトラウマ対応

杉山氏の 以下の思いに、とても共感した。
そして、本著のような 惜しみない情報提供をしてくれていることに、心から感謝したいと思う。

以下、あとがきより引用。

 この本を出すことになった動機は第5章にすでに記した。(筆者注:5章には、上のSE療法の紹介のところで触れたような内容が書いてある)トラウマを巡る症例のあまりの多さに反して、その治療が行き渡っておらず、誤診や誤った治療があまりにも多見されるからである。

 安全で有効なトラウマ処理の方法について、筆者はこの数年、試行錯誤を繰り返してきたが、それに加えて、トレーニングや講習などを受けなくても実施可能でさらに安全な方法という、矛盾に満ちた技法を開発せざるを得なくなったのである。

杉山氏は、これからの時代、臨床現場でメインテーマとなるのは、「トラウマ」だろうと言っている。

私も、「トラウマ」、そして発達性トラウマ障害にかかわる「愛着(アタッチメント)」の問題は、避けて通れない重要なテーマだと思う。

これからも、学びを深め、実践を積んで、取り組んでいくしかない。

発達性トラウマ障害と複雑性PTSDの治療
杉山 登志郎
誠信書房
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