SE™(ソマティック・エクスペリエンシング®)療法とは

SE™(エスイー)療法、ソマティック・エクスペリエンシング(Somatic Experiencing®)療法・・・以下、「SE™」と表記・・・について、ここでは、以下4つの特長(+おすすめ本)をお知らせしようと思います。意外と説明が難しいSE™なのですが、私なりに、かみ砕いてまとめたつもりです。少々長くなりますが、ご興味ある方はお読みくださいませ。

【1】SE™は、最新のトラウマ療法
【2】SE™は、自律神経のメカニズムをふまえた、神経生理的アプローチ
【3】SE™は、動物脳とハ虫類脳 に働きかける
【4】SE™は、未完了の完了、未解放の解放をめざす
【5】SE™を学ぶために、オススメの本

【1】SE™は、最新のトラウマ療法

SE™は、米国のピーター・リヴァィン博士が開発した最新のトラウマ療法です。NASAアメリカ航空宇宙局でも使われています。日本では、最新のトラウマ療法というと、NHKで取り上げられたこともあり、「EMDR」(眼球運動による脱感作と再処理法)が有名なようです。EMDRは、ソマティック(身体的/非言語的)アプローチの心理療法ですが、SEも、そのようなソマティック・アプローチの1つになります。

SE™は、トラウマ症状の解消や、慢性的ストレスの軽減に役立ちます。また、不安障害や過敏性腸症候群など、自律神経系の過剰活性や調整異常からくる不具合にも効果があります。1回のセッションで改善、とはいきませんが、SE™アプローチを重ねることで、自分が無意識にとってきた神経パターンを少しずつ変えていき、自己調整力を養っていく効果があります。

セラピー

【2】SE™は、自律神経のメカニズムをふまえた、神経生理的アプローチ

体調不良やメンタルヘルスの改善を考える時、「自律神経」を考えることは、医療業界、健康業界において、いまや常識です。そしてSE™は、まさにその、自律神経のメカニズムをふまえてアプローチする療法です。

自律神経は、カラダの外環境と中環境をモニターして、心身の状態をコントロールしている神経です。天気、気温、体調、疲労具合、対人ストレスなどの刺激をリアルタイムで感知して、身体の様々な生理現象(体温、血圧、脈拍、呼吸、血流、食べ物の消化、排出、睡眠リズムなど)をコントロールしています。本人の意思に関係なく、「自律して」(自動的に)活動するので、「自律神経」といいます。

この自律神経は、車でいうと「アクセル」のような交感神経と、「ブレーキ」のような副交感神経。その2系統が、シーソーのような関係で働いているとするのが、従来の理論でした。

日本では、まだまだ その「2系統システム論」が一般的なのですが、最近(ここ20~30年)になって、ホ乳類動物においては、3系統システム(交感神経系、腹側迷走神経系、背側迷走神経系)で働いているとする、多重迷走神経理論(ポリヴェーガル理論)が分かってきたのです。

SE™では、この最新の自律神経理論にもとづき、アプローチします。

そして、トラウマ症状には、自律神経の「逃走/闘争/凍りつき反応」が大きく関係しており、それらの生理的反応が 未解放・未完了となってしまった時に、トラウマ症状や 神経系の調整異常が起きるのだ と考えます。(詳しくは後半参照)

SE™は、そんな、自律神経系のメカニズムをふまえた、神経生理学的視点のアプローチなのです。

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【3】SE™は、動物脳とハ虫類脳 に働きかける

下の図は、脳の構造をざっくりと表した模式図です。三位一体脳モデルとも言います。

三位一体脳モデル

※上記のイラスト使用許諾についてはこちら

SE™は、「動物脳」「ハ虫類脳」に働きかけます。

アタマでは分かっていても、気持ちと カラダがついてこない。

という時、脳の中では、

アタマ(=理性脳)では分かっていても、気持ち(=動物脳)と カラダ(=ハ虫類脳)がついてこない。

・・・ということが起きているのです。

「動物脳(大脳辺縁系では、食欲や性欲、快/不快、愛着感情、怒り、やる気など、動物(主にホ乳類動物)に共通する感情をつかさどっています。これら感情は、犬やネコなどのホ乳類動物も持っていますよね。また、記憶に関わる「海馬」や、不安、恐怖に関わる「扁桃体」も、ここの領域です。

動物に、理屈や言語で何かを分からせようとしても、難しいものです。犬やネコには、少しだけ言葉が通じるような気がしますが、あれは、言葉の内容というより、声のトーンや表情、見た目の印象などの「非言語的メッセージ」が何となく(直感的に)相手に伝わって、コミュニケーションが取れているのだと考えられます。

さて、この動物脳(感情脳とも言います)の影響力は、理性脳よりも はるかに大きいのです。

人間が、もっともそうな理屈でいろいろな説明や言い訳をしていても、実はその根っこには、快/不快、好き嫌い、やる気の有無、不安、恐怖、寂しさ…などが理由である ことが、圧倒的に多い。この、根っこにある感情や感覚を 本人が自覚できていれば まだいいのですが、本人すら自覚していない。無自覚だけど、実はバッチリ影響されている。そんなことが非常に多いのです。

さらに、もっと重要で影響力が強いのが、「ハ虫類脳(脳幹)」です。

ハ虫類脳は、ハ虫類(ヘビやワニなど)も共通して持っている、原始的な脳の部分です。このハ虫類脳は、先に挙げた自律神経もつかさどっており、動物が生存するために必要な、基本的な身体的機能 や 反射を担当しています。

ハ虫類脳(脳幹)にとっては、「それは、生存のために必要か」「生存のために、危険か安全か」しか考えません。とにかく、安全に生き長らえること。それが至上命題なのです。

この脳幹には、もちろん 言語でのメッセージなど、通じません。「これは危険じゃないから、そんなに心臓をドキドキさせなくても大丈夫なのよ。」とか、「この場所は安全だから、そんなに身体中の筋肉を萎縮させなくてもいいのよ。」などと説得しても、分かってもらえません。

ハ虫類脳(脳幹)が キケン!と察知するものなら、とにかく生き残るために、自律神経をつかって「戦うか逃げるか」の防衛反応をとろうと、全力必死で、準備をしてしまうのです。

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SE™では、このような「理屈や言語は通じない」けれど、人間の行動や反応に「とても影響力を与えている」動物脳やハ虫類脳に対して、イメージとか身体感覚という「非言語的/身体的メッセージ」を使って、メッセージを伝えよう。アプローチをしていこうと考えます。

以下は、SE™で主につかう2つの感覚です。

◆外受容感覚(SEでは「オリエンテーション」とも言う)
・外部環境を、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感を通じて、直接的に把握したり、感じ取ったりすること。
◆内受容感覚(心理の世界で言う「フェルトセンス」
・身体の内部環境を、呼吸、心拍数、体温、平衡感覚、空腹や喉の渇き、消化排泄欲求、感情、快感苦痛などを通じて、気づいたり感じ取ったりすること。

このような「オリエンテーション」や「フェルトセンス」を、感じてもらったり、身体で表現してもらったりすることを通して、動物脳やハ虫類脳にメッセージを送るのです。

・「今は安全だよ」
・「危険なものは ないよ」
・「やりたかったことを やれたよ」
・「気持ちいいよ」
・「安心だよ」
・「もう 終わったよ」

・・・それを、脳に 実感として理解してもらい、学習してもらうのです。

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【4】SE™は、未完了の完了、未解放の解放をめざす

こちらでは「ゲシュタルト・セラピー」も扱っていますが、SE™とそちらの両方に共通するのが、「未完了の完了」「未解放の解放」を目指すところです。

具体的なイメージを知りたい方は、こちらの記事「私のSEセッション体験談 ~未完了を完了する~ 」をご覧ください。こちらで紹介した体験談は、SE™セッションだと説明しても、ゲシュタルト・セラピーのセッションだと説明しても、どちらでも問題ないような内容です。

この体験談では、私が自転車事故を体験した時に、気持ちやカラダがやりたかったのに出来なかったこと・・・「ブレーキをかける」「自転車と自分の身体が、ちゃんと停止したことを確認する」「自分の足でしっかりと地面に着地する」「加害者であるA君に怒りをぶつける」ということが、まさに「未完了の事柄」でした。

それを、アタマで考え、意図的に行うの「ではなく」、カラダの反応を確認しながら、カラダやココロ(動物脳やハ虫類脳)の自然な声(衝動)に従って、カラダが表現したい形で、カラダがしっかり味わえるように、1つ1つ行っていくのがポイントです。

そうして、カラダやココロ(動物脳やハ虫類脳)が、「未完了なことを完了させられた」「未解放だったものを解放できた」と、しっかり納得できるようにサポートするのが、これら療法の特長なのです。

セラピー

なお、ゲシュタルト・セラピーも SE™も 「未完了の完了」を目指しますが、SE™ではその「未完了」を、「神経生理学的な視点」「動物行動学的な視点」で注目しているのが、1つの特長です。

人間を含め動物は、危機をとらえようとする時、一定の「定位反応」を起こします。また、脳幹が危険だと判断した時は、自律神経が作動して、「闘争か逃走か」の防衛反応を起こします。しかし、起きた出来事があまりにも圧倒的な時、人間や動物は「凍りついて」しまって、逃げるも戦うも、どちらの反応も起こせなくなってしまう時があるのです。

そして、逃げるも戦うも出来なかった(未完了となった)時、神経系は、逃走や闘争のために準備した、大量なエネルギーを、そのまま抱え込んでしまいます。この未解放のエネルギーを、野生動物であれば、危険が去った後に身体をブルブル震わせることで、きちんと解放、処理することができるのですが、人間や一部の動物は、様々な事情で、それが出来ない時がある。そのような未解放や未完了が起きた時、トラウマ体験となり、トラウマ症状となってしまうのだと、SE™では考えるのです。

SE™では、このような神経生理的な「未解放」や「未完了」に注目して、その完了を目指します。しかし、一気に解放・完了しようとはしません。クライアント様の 今の状態や神経パターンを踏まえた上で、無理のない、安全な範囲や量で、少しずつ解放、完了していくことを目指します。いわゆる「スモールステップ」(SE™では、これをタイトレーションと言うのですが)で、進めていくのです。

一気に進めないのは、トラウマとなってしまった出来事を、その恐怖のままに、また再現するような形をとってしまったら、その人はまた「凍りついて」しまって、また「未完了の完了」を果たせなくなってしまうから。あるいは、ダイエットと同じで、欲張ってその人に負担のある形、無理のある形を取ってしまうと、後からリバウンドが起きてしまうから。トラウマ解消もダイエットも、結局は、無理のない長続きする方法を重ねる方が、安全で確実で近道である。そんな感じでしょうか。SE™は、効果が大きいだけでなく、クライアント様に優しい、安全を重視した療法なのです。

ソマティック・エクスペリエンシング

【5】SE™を学ぶために、オススメの本

ここまで長文を読んでくださった皆さん、ありがとうございました。

ここまで読んでいただき、何となく分かって頂けると思うのですが、SE™は、なかなか奥が深い療法なのです。細かい内容を書き出したら、本当にキリがない位、奥が深いです。

でも、そんなSE™をもっと詳しく知りたい、学びたいと思って頂けた方には!
SE™関係の書籍で、現在 日本語に翻訳されているものは、以下の4冊があります。

正直なところ、一般の方にもスラスラ読める…という本ではない気がするのですが、(^^;) 読み応えはあると思います! 興味のある方は、ぜひどうぞ。

心と身体をつなぐトラウマ・セラピー
心と身体をつなぐトラウマ・セラピー

身体に閉じ込められたトラウマ:ソマティック・エクスペリエンシングによる最新のトラウマ・ケア
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子どものトラウマ・セラピー―自信・喜び・回復力を育むためのガイドブック
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トラウマと記憶: 脳・身体に刻まれた過去からの回復
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以上で、SE™療法についての、私なりにかみ砕いた?説明を終わりにします。
先にもご紹介しましたが、SEセッションの具体的なイメージを知りたい方は、以下の体験記事をどうぞ。

私のSEセッション体験談 ~未完了を完了する~

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